2019年現在、コンビニのレジ前コーナーは、唐揚げや焼き鳥のホットスナック系が占拠している。おかずやおつまみ、小腹満たしにはぴったりで、私もよく利用している。

が、ふと思い出したことがある。

ここって、ドーナツがあった場所じゃないかと。

かつて、コンビニに挽きたてコーヒーが導入された時、その横にはドーナツがあったはずだ。でも今は見当たらない。どこへ行ったのやら。

当時は「もはやこれはドーナツ屋さんではないか」と思い、仕事の合間に、チョコ付きののオールドファッションをコーヒーと共に買っていたものだ。

しかし今の今まで「ドーナツはどこへ?」と疑念も持たずに数年間過ごしていた私に「どうしてドーナツがないんだ!」と嘆く資格はない。

ただそれでも、あの時過ごした甘い甘い思い出は今でも鮮やかで、私にとっては胸の中で輝く宝物のようだ。

今まで言えなかった「ありがとう、ドーナツ」という言葉を胸に、私はコンビニの中を歩き回った。適当に飲み物をカゴに詰め、明日の朝食用にパンでも買おうかなとパンコーナー行った。

そこにはドーナツがあった。

私の顔を客観的に説明したら、まさに「キョトン」としていただろう。ドーナツのことを思い出し、もうレジ前にはないことを悲しみ、そしてドーナツへ最大級の感謝を思い浮かべた直後だ。

ドーナツがあった。

パンエリアの最上段、しっかりとドーナツコーナーのパネルまで用意されていて、いまやパンコーナーを牛耳るエース的存在になっていた。

ひとつひとつ個別に包装されているその姿は、さながら「私はもう定番になったのだよ」と言わんばかりの、気品漂うたたずまいだ。

私は久しぶりの再会に戸惑いながらも、すぐに手に取った。1個なんてケチくさいことは言わない。今夜は3個まとめて抱きしめてやると、心に誓った。

そうして家に着いた時、ふとパッケージの裏を見て、私は少し狼狽する。

459kcal

そう、1個あたり459kcalなのだ。3個食べれば、立派な定食以上のエネルギーだ。

それでも私は迷うことなく3つ封を開けた。久しぶりの再会にヤボなこと言うなよ、そういう気持ちだった。

数年ぶりに食べたセブンイレブンのドーナツは、甘さの奥に背徳感が見え隠れしていて、それがさらに私の気持ちを高揚させたのだった。

(終)